生きること、死ぬこと、それ以上のなにか・・・

このブログでは、音楽、なかでもクラシック作曲家である「バッハ」を中心に取り上げます。 また演奏家、CDについての批評も行います。 ちなみに私は指揮者のセルジュ・チェリビダッケに深く傾倒しております。

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チェリビダッケ批評 15 ベートーヴェン 交響曲第5番 ハ短調

チェリビダッケ批評 15 ベートーヴェン 交響曲第5番 ハ短調
Beethoven Symphonies Nos. 4  5

ベートーヴェン:交響曲第4&5番
(2001/04/18)
チェリビダッケ(セルジュ)

商品詳細を見る


EMIから販売されている、チェリビダッケの演奏をレヴューします。
これは第15回目のレビューになります。

第15回目の曲目は

”ベートーヴェン 交響曲第5番 ハ短調” (1992年録音)

「運命」という通称で呼ばれる、
ベートーヴェンの非常に有名な5番目の交響曲です。


この曲には、壮年期のベートーヴェンらしさに満ち満ちた曲です。
特に動機労作の点について、それが顕著に現れています。


冒頭の”ダダダダーン”というリズムと、
G→Es”長3度の移行”の音程が、
曲のほとんどを覆いつくしています。


そして、「暗」→「明」への表情の移り変わりが、
非常にわかりやすく提示されているのです。


演奏について述べます。

第1楽章 Allegro con brio ハ短調 2/4拍子 ソナタ形式

非常に慎重に、緊張感を持って、第一主題が鳴ります。
この部分が交響曲第5番全体の骨格に当たる部分なので、
それは当然です。

チェリビダッケの演奏の場合、曲の重要な箇所の意味が、
(例えばこの冒頭部分)意識せずとも
意識して聴く場合と同じくらいの強度で伝わります。
つまり、曲の構造原理が格段に把握しやすくなるのです。

私は、良い演奏とはこのようにあるべきだと考えています。

再現部も決して力まず、スムーズに音楽は流れます。
しかし、ただそのまま流れているのではなく、
なぜそのような展開をしながら曲が進行するのか、
非常に丁寧に教えてくれます。

チェリビダッケとミュンヘン・フィルがこの曲の構造原理を完璧に把握しており、
またそれを演奏として実現できる能力の高さを持っていることを示唆しています。


第2楽章 Andante con moto 変イ長調 3/8拍子
主題と3つの変奏、コーダから成る緩徐楽章。


非常に穏やかな表情をしています。
しかしその背後でどのように変奏が行われているのかを、
緻密に解き明かしています。


第3楽章 Allegro. Attacca ハ短調 3/4拍子
複合三部形式 スケルツォ - トリオ - スケルツォ - コーダ


この楽章は通常、緊張感を持って演奏されることが多いですが、
チェリビダッケは非常におおらかに演奏しています。
フゲッタの部分での各楽器間のパートバランスの繊細さは瞠目に値するほどです。
この楽章は、切れ目なく、次の楽章へ進みます。


第4楽章 Allegro. Presto ハ長調 4/4拍子 ソナタ形式

ここでは、一般的な演奏では存在する、
熱狂的な興奮は存在しません。
あるのは偏執狂的なまでに論理的に演奏しようとする確固とした意思だけです。

冒頭のフォルッテッシモの部分でも決して響きは濁りません。
第4楽章だけを取り上げると、ソナタ形式には聴こえないかもしれませんが、
交響曲第5番全体で俯瞰すると、
全体が非常にソナタ形式的であると気付かせてくれます。


チェリビダッケが指揮したベートーヴェンを聴くと、
この部分はこうなっていたのかと溜飲を下げることが非常に頻繁にあります。

あまり適切な表現ではないかもしれませんが、曲を解剖しているような印象を受けます。
(ときにそれは美しさだけではなく、グロテスクな様相を呈すこともあります。)

ベートーヴェンが非常に論理的に作曲を行っているということ、
そのことを改めて認識させてくれるような演奏だと思います。






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テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

  1. 2011/03/19(土) 00:46:45|
  2. チェリビダッケ批評
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

キース・ジャレットについて(ピアノ・ソロ)

音楽家(ジャズ・ピアニスト)、
キース・ジャレットについて、有名なピアノ・ソロの音源を整理します。
(簡略ですが、レヴューも行いました。)


Keith Jarrett

彼のピアノ・ソロで有名な作品は、10作品ほどあります。

1. Facing You/ フェイシング・ユー(1971)
キースの記念すべき最初のピアノ・ソロ・アルバムです。
こののアルバムには、
ジャズ以外のゴスペル、ブルース、クラシックなどさまざまな音楽要素が混在していることと、
おそらくは事前の準備なしのまったくの即興演奏であることから、
聴き手にとって音楽の進む方向の予測がつきにくい点が、
多少、とっつきにくいものにしているのかもしれません。
しかし、ここで聴かれるロマンティシズムは、
まさにこのあと続くソロ・アルバムと共通のもので、
特にこのアルバムの白眉と言うべき「リトゥーリア」は、
感情移入が凄まじく、
彼のソロ演奏の中でも屈指のものだと思います。


Facing You: Touchstones Series (Dig)Facing You: Touchstones Series (Dig)
(2008/08/26)
Keith Jarrett

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2. Solo Concerts/ ソロ・コンサート(1973)
続いてのソロ・アルバムは、
そのスケールの点から前例のないものであり、
またこの音楽がジャズなのか否かという議論とともに、当時大きな話題となりました。
これはジャズというジャンルには収まりきれない、
キース・ミュージックとしか言えない音楽であり、
このローザンヌ、ブルーメンでの演奏が、
その頂点を記録しているのではないかと思います。
ブレーメンとローザンヌではそれぞれ演奏の傾向が微妙に異なっています。
そのどちらとも、神秘性に満ち、感動的な音楽です。
これは、大傑作です。


Solo Concerts: Bremen & LusanneSolo Concerts: Bremen & Lusanne
(2000/02/29)
Keith Jarrett

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3. The Koln Concert/ ケルン・コンサート(1975)
数あるキースのソロ・アルバムの中で、
最もポピュラーなものです。
かなり状態の悪いピアノのため、
"音色と表現の限界に拘束されながらの演奏を強いられた"
ということみたいですが、
キースの明晰なタッチによるイマジネイティブなフレイズが次から次へと現われ、
そして移りゆくのに心身を解放して、
ただただゆだねているのは、本当に気持ちのいい事この上ないものです。
このアルバムは結果として、
彼のロマンティシズムの一つのピークを記録したアルバムと言えるのではと思います。
これも、大傑作です。


The Koln ConcertThe Koln Concert
(1999/11/16)
Keith Jarrett

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4. Staircase/ ステアケース(1976)
"素晴らしいグランド・ピアノ"を使用したこともあり、
音質の面においてもすぐれたアルバムです。
アルバムの制作事情から考えても、
事前の準備なしのまったくの即興演奏ということになるけど、
この演奏は素晴らしいと思うし、個人的にはとても評価しています。
「ケルン・コンサート」に比べると、ロマンティシズムが抑制されているので、
聴く人の好みによっては、この点で少々物足りないかもしれませんが、
より理知的な演奏で、すっきりしていて、"「ケルン」もいいけど、
もう少しコンパクトなものが欲しい"
という人には、ピッタリのアルバムだと思います。


StaircaseStaircase
(2000/05/09)
Keith Jarrett

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5. Sun Bear Concert/ サンベア・コンサート(1976)
LPで10枚組(CDでは6枚組)、
通して聴くと7時間以上かかるという、異常なソロ・アルバムです。
買うほうも買うほうだけど、結構売れたらしいです。
今回はじっくり聴いてみて、いろんな意味で堪能しました。
ジャズはもちろんの事、クラシック
(バッハ、ドビュッシーからメシアン、シェーンベルクの無調音楽、
フィリップ・グラスやライヒのミニマル・ミュージックなどの現代音楽風まで)や
ゴスペル、ロック、フォークに至る、
ここにはピアニズムにおけるあらゆる可能性があるのではという気がします。
ただ、出来・不出来があるのも間違いのないところで、
キースが次の展開を探る間の長い単調なフレーズに付き合うのに、
いささか疲れることがあるのも確かです。
個人的な印象では、京都、大阪、札幌は全体的に気に入ったけど、
東京、名古屋はいまいちで、東京はアンコールが良くて、という感じです、
次に聴く時にはまた違った評価となるかもしれません。


サンベア・コンサートサンベア・コンサート
(1997/08/25)
キース・ジャレット

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6. Vienna Concert/ ウィーン・コンサート(1991)
非常に、瞑想的な音楽です。
・Part Ⅰ(約40分):瞑想的な音楽で開始され、20分を過ぎてから、
早いパッセージの展開となり、ふたたび祈りに回帰して消えるようなエンディングとなります。
・Part Ⅱ(約25分):始まりはキース特有の切迫し、疾走する感じのフレーズ、展開、
そして瞑想。このPart Ⅱは、感動的なとても好きな演奏です。
このアルバムを聴いていると、以前のアルバムのように、
ジャズからクラシック、ゴスペルまでのさまざまな音楽要素が、
万華鏡のように次から次へと現れるという形からは、
ずいぶんと違って来たなあという感慨を覚えずにはいられません。
それはキースのソロ演奏に対する指向の変化によるものなのだろうと思います。
これは、大傑作です。


Vienna ConcertVienna Concert
(1994/03/01)
Keith Jarrett

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7. La Scala/ ラ・スカラ(1995)
ウィーン・コンサート同様、
オペラの殿堂でのライブ録音です。
ハイライトは、45分に及ぶPartⅠです。
静かに始まり、テーマの提示からクライマックスの感動まで、
徐々に盛り上げていく構成力は見事なものです。
PartⅡでは、現代音楽風の早い音のパッセージの動きが13分ほど続いた後、
優しく、かつ瞑想的な雰囲気に移行し、いくらかの展開を経て、
再度冒頭の部分に戻り曲が閉じられます。
PartⅠ同様、曲の構成に注意が払われている感じです。
全体的なアプローチは、
ウィーン・コンサートと共通するところが多いように感じます。


La ScalaLa Scala
(2000/01/25)
Keith Jarrett

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8. The Melody At Night, With You/ メロディ・アット・ナイト、ウィズ・ユー(1998)
病気で演奏活動をしばらく中断していて、
これは復帰後最初のソロ・アルバムで、
全10曲のスタンダード・ナンバーが収録されています。
いずれも子守唄のように愛情をこめて歌っています。
とくにこれということではなく、全曲いいと思います。
この傾向が一時的なものかどうか、
今後のソロ・アルバムに注目したいと思います。
傑作です。


The Melody At Night, With YouThe Melody At Night, With You
(1999/10/19)
Keith Jarrett

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9. Radiance/ レディエンス(2005)
日本での演奏が収録されたアルバムです。
私は、実際にコンサートに足を運びました。
しかし、残念ながら、
キースの衰えに、
失望の念を覚えずにはおられませんでした。
(私は、現在のキース・ジャレットは余りにもダイナミズムに拘り過ぎている様に感じます。)
私はこのアルバムもあまり評価していません。


RadianceRadiance
(2005/05/03)
Keith Jarrett

商品詳細を見る



10 Carnegie Hall Concert/ カーネギー・ホール・コンサート(2006)
このアルバムでも、Radianceの悪い流れを引き継ぎ、
私が期待している、キース・ジャレットの音楽ではありませんでした。
(無論、聴くべき個所は随所に出てきますが・・・)


Carnegie Hall ConcertCarnegie Hall Concert
(2006/09/26)
Keith Jarrett

商品詳細を見る



私は彼の作品の中で、一つ選ぶのであれば、
「Vienna Concert/ ウィーン・コンサート(1991)」を採ります。
次点に、
「Solo Concerts/ ソロ・コンサート(1973)」
「The Koln Concert/ ケルン・コンサート(1975)」
を挙げるといったところでしょうか。



今後、キース・ジャレットという音楽家は、
何処へ向かってゆくのでしょうか?
期待を込めて、聴き続けていきたいと思える、
数少ない音楽家の一人です。






テーマ:JAZZ - ジャンル:音楽

  1. 2011/03/18(金) 06:40:07|
  2. Jazz/Progre/Rock等
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チェリビダッケ批評 13 スメタナ 我が祖国より 「モルダウ」

EMIから販売されている、チェリビダッケの演奏をレヴューします。
これは第13回目のレビューになります。

第13回目の曲目は、

"スメタナ 我が祖国より 「モルダウ」"(1986年録音)
原題: Smetana Vltava from Ma Vlast


とても有名な曲です。
モルダウのメロディーはほとんどの方が聴き覚えがあるのではないでしょうか。

スメタナの「我が祖国」という作品は、
あえて、一言でいえば、
チェコという国のナショナリズムの高揚を作品化したものだと言えます。
チェコという国はこんなに素晴らしいんですよ、ということを、
連作交響詩という形で表明しているように感じます。

この、「我が祖国」は全部で6つの曲から、構成されています。
はっきり言って、どの曲も似たようなものです。
(全曲通して聴くと、非常に疲れます。
「はいはい、チェコはいい国だね。分かったから、もういいよ。」
という感じです。 彡(´・_・`;)彡ヒューヒュー
すきま風が吹いているようにも感じます。)

この曲の演奏では、一般的に、
ラファエル・クーベリック指揮のものが名盤とされているようですが。
(クーベリックはチェコ出身の人です。)
私は、あまり評価してません。
クーベリック自体は非常に好きな指揮者なのですが、
「我が祖国」という曲が、あまりメリハリのない曲なので、
非常に一面的というか、なんというか・・・
(政権演説を聴いているような気分になります。)


「モルダウ」はこの曲集の中でも、最も起伏に富んでいるので、
この曲単独での演奏機会が多い状態です。
この曲だけ取り出して聴くなら、まぁ疲れません。


だいぶ、否定的なことを述べましたが、チェリビダッケの演奏は非常に立派なものです。

―演奏について―

まず、冒頭のフルートの音色に注目してみてください。
この圧倒的な静寂!
深い海の中で音楽を聴いているようです。
音は確かに鳴っているのに、
無音の状態より、静寂を感じさせます。


そのトーンを維持したまま、旋律は弦楽器群に移行します。
ここで朗々と詠われる、あの主題。

このメロディーは余りにも単純なものなのかもしれません。
しかし、単純さを突き詰めることでしか、表現できないこともあります。
この部分は偉大だといっても過言ではないと思います。


続いて、管楽器を中心に曲は展開していきます。

そして、また、あの主題が再現され、弦楽器で奏されます。
この部分での確信に満ちた表情。
この演奏の白眉の部分です。


曲はその確信を持ったまま、完結します。

チェリビダッケの演奏で聴くと、
他の演奏家の演奏で得た印象と全く異なる印象を受けることが多々あります。
この曲は、その好例だと思います。

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

  1. 2011/03/13(日) 15:01:27|
  2. チェリビダッケ批評
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チェリビダッケ批評 12 ベルリオーズ 序曲「ローマの謝肉祭」

EMIから販売されている、チェリビダッケの演奏をレヴューします。
これは第12回目のレビューになります。

第12回目の曲目は、

"ベルリオーズ 序曲「ローマの謝肉祭」"(1988年録音)
原題: Berlioz Overture Le Carnaval Romain


非常にベルリオーズらしい曲です。
ベルリオーズらしいとは?
(オーケストレーションがド派手、和声進行がグチャグチャ)
今日、ベルリオーズの序曲の中では最も頻繁に演奏されている曲です。


ベルリオーズは当時、オーケーストレーションの改革者でした。
私の主観ですが、ベルリオーズはベートーヴェン等の古典派の作曲者によって、
創り上げられたオーケーストレーションを良い意味で解体した作曲家です。
(繰り返しますが、和声進行は酷いです。)

そのような曲をチェリビダッケが演奏したらどうなるのか?
オーケストラの音色の饗宴です。
これほど豊かなオーケストラの音色というのはなかなか聴けるものではありません。

弱音部の繊細さ。
トッティの部分での明晰さには恐れ入るばかりです。


特に強調したいのが、曲の終盤、オーケストラが非常に盛り上がる個所があります。
ここでガツーンときて、
これで終わりかと思うと、
さらにその上の上まで上り詰めるのです。
(再三、繰り返しますが、和声進行はヘンテコです。)
この演奏の凄さは、聴いてみなければ分からないと思います。

テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

  1. 2011/03/09(水) 04:27:24|
  2. チェリビダッケ批評
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  4. | コメント:0

チェリビダッケ批評 09 ドビュッシー 「海 - 管弦楽のための3つの交響的素描」


La Mer Celibidacheドビュッシー:「海」「イベリア」
(2001/04/18)
チェリビダッケ(セルジュ)

商品詳細を見る


EMIから販売されている、チェリビダッケの演奏をレヴューします。
これは第9回目のレビューになります。

第9回目の曲目は、
”ドビュッシー 「海 - 管弦楽のための3つの交響的素描」”(1992年録音)
原題(仏): La Mer, trois esquisses symphoniques pour orchestre

ドビュッシーの管弦楽作品の中で、最高傑作ではないでしょうか。
オーケストレーション、その着想、そして刻一刻と変化する音色。

この曲が、印象主義音楽を代表する作品であり、
近代音楽史上最も重要な作品の1つであると言われていることも納得出来ます。

ドビュッシーは、
「音楽の本質は形式にあるのではなく色とリズムを持った時間にこそある。」
という発言をしています。

そして、この「海」という曲は非常に色彩的な音楽です。
リズムはあまり強く意識、強調させられません。
(私が、気付いてないだけかもしれません。)


一応標題音楽の体を為していますが、
標題音楽「海」、というより、
オーケストラのための協奏曲といった印象を受けます。
(バルトークじゃないよ。)


この曲の3楽章構成で作曲されています。

それでは、演奏について述べます。

第1楽章:
「海の夜明けから真昼まで」 (De l'aube a midi sur la mer)


冒頭部分、つまり夜明けの海の部分。
これほど神秘的な音楽は、
ブルックナーの交響曲以外、知りません。


移りゆくニュアンスの透明感、色彩の変化。
そして、背後にある哀しみ。

そして、第1楽章で早くもクライマックスが訪れます。

徐々に、しかし確信を持って、一歩一歩登りつめていきます。

ただ、上へ、登りつめて、登りつめて、登りつめて。
そこで今までの緊張感が一気に昇華されます。
遥か、地平線の彼方を見通せるような感覚に出会います。


この感覚!
一瞬にして、景色が全く異なるものへ変化する。
このような、一瞬にして世界観が変わるような演奏は、
チェリビダッケ&ミュンヘン・フィル
だけしか成し遂げられなかったものだと思います。


第2楽章:
「波の戯れ」 (Jeux de vagues)


この「海」という作品は、第1楽章のクライマックスで、
圧倒的なカタルシスを与えているため、
後の楽章は、エピローグ的な感が否めません。


しかし、そこはチェリビダッケ。
ボンクラの演奏家とは違います。
この曲の問題点を解決して、第2楽章、第3楽章にも、
それがなければならないという、
必然性を持たせることに成功しています。


ニュアンス豊かな音色、ただの盛り上がりではありません。
(海の演奏はオーケストラをただ派手に鳴らすだけの演奏が多々あります。)
夢を見ているかのような、優しさに満ちた演奏です。
そういえば、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」も夢を描いた作品ですね。


第3楽章:
「風と海の対話」 (Dialogue du vent et de la mer)


緊張感を持って、この楽章は開始されます。

この楽章の途中、夢をみるかの様に幻想的な、
ちょっとした事で壊れてしまうような、
繊細さを持っています。

そして、この楽章の最後は、第1楽章の高揚に匹敵するような音楽で幕を閉じます。
(盛り上げ方は、第1楽章の方が、自然で神秘的です。)

確かに、この「海」という作品のクライマックス、肝は第1楽章にあるのですが、
それを感じさせない、果てしなく美しい音色の饗宴です。


<全体を通じての感想>

チェリビダッケとドビュッシー、ラヴェルの相性は抜群でした。
(特にラヴェル。驚天動地の演奏です。)
チェリビダッケのブルックナーも、それはそれは素晴らしいものでしたが、

「細部への偏執狂なこだわり」
「音色の(微妙な、しかし、とても大切なことです)な変化」
「言葉にならないニュアンス(雰囲気のようなものです)」


この3点において、チェリビダッケは最晩年、とんでもない演奏を行っていました。

過剰なまでの繊細さ、
畏怖すべき圧倒的な力、
曲の遷移により刻一刻と変化する色彩。



もう、言葉が出てきません。
これは、言葉では、表現出来ません。





Wagner Debussy

別のCDをご紹介いたします。
ことらは、チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィルの演奏で、
ワーグナーの「前奏曲と愛の死」
ドビュッシーの「海」
が収められたディスクです。

いつか、この録音に関して批評を行うかもしれません。

残念ながら、実はこちらのCDの方が、
演奏のクオリティも録音状態も良く、
当日、コンサート・ホールで鳴り響いていたであろう、
会場の空気感をかなり正確に伝えてくれます。


(海賊版です。
 ヤフオクなどで購入することが出来ます。
 当然、Amazonでは買えません。)

次回は、チャイコフスキー 交響曲第5番を取り上げます。






テーマ:クラシック - ジャンル:音楽

  1. 2010/12/13(月) 04:23:36|
  2. チェリビダッケ批評
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