生きること、死ぬこと、それ以上のなにか・・・

このブログでは、音楽、なかでもクラシック作曲家である「バッハ」を中心に取り上げます。 また演奏家、CDについての批評も行います。 ちなみに私は指揮者のセルジュ・チェリビダッケに深く傾倒しております。

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チェリビダッケ批評 23 ムソルグスキー/ラヴェル 「展覧会の絵」

EMIから販売されている、チェリビダッケの演奏をレヴューします。
これは23回目のレビューになります。

23回目の曲目は、

"ムソルグスキー/ラヴェル 「展覧会の絵」"(1993年録音)
原題: Mussorgsky/Ravel "Pictures at an exhibition


(長らく更新していませんでした、申し訳ありません。)
因みに、EMIはこの音源を販売形態を変えて、3枚も出しています。
お金儲けの魂胆がみえみえです、クソー!
(しかし、私はチェリビダッケマニアなので、全部買ってしまいました・・・
だって、それぞれのCDのカップリング曲が違うんですよ・・・)


①EMI

セルジュ・チェリビダッケの至芸セルジュ・チェリビダッケの至芸
(1997/10/22)
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

商品詳細を見る


チェリビダッケのEMI録音BOXが出る前に単体で販売されたものです。
曲目:チャイコフスキー 幻想的序曲「ロメオとジュリエット」
   ムソルグスキー~ラヴェル編曲「展覧会の絵」
どちらともミュンヘン・フィルハーモニーの演奏です。
(これ以降オーケストラについての表記がない場合は、ミュンヘン・フィルとの演奏です。)

Mussorgsky.jpg

チェリビダッケのリハーサルを収録したもので2枚組です。
曲目は、上記と同じです。

Bolero.jpg

チェリビダッケのBOXが発売され、その中に入っていたのがこれです。
曲目:ラヴェル「ボレロ」
   ムソルグスキー~ラヴェル編曲「展覧会の絵」

(EMIの「展覧会の絵」の音源は全て同一のものです。)

チェリビダッケのムソルグスキー「展覧会の絵」

これは、チェリビダッケファンにとっては、禁断の響きでしょう。
生前、チェリビダッケはこの曲を好んで演奏していました。
そして、この演奏が奏されていたときには、悠久の流れがありました。
断言しますが、「展覧会の絵」に関しては、チェリビダッケを超える演奏はありません。
(感じ方は人それぞれなので断定したくはないのですが)
そこまで言わしめる圧倒的な音楽です。

各曲を見ていきます。

第1曲目-第1プロムナード Promenade
堂々と威厳をもち、しかしどこか儚く曲は開始されます。
非常に有名なテーマですが、全く新しく、今創造されたような印象を受けます。
第2曲目-小人(グノーム) Gnomus
非常に怪しい音楽です(良い意味で)。
この様な毒毒しい怪しさを持つ音楽も稀です。
第3曲目-第2プロムナード [Promenade]
2回目のプロムナードは木簡楽器を中心に奏でられます。
必然的にそれは郷愁を誘う音楽になります。
第4曲目-古城 Il Vecchio castello
この中間色の美しさ、弛緩(良い意味で)を見事に表現しています。
第5曲目-第3プロムナード [Promenade]
金管楽器中心のプロムナードです。
金管楽器は全体のチューニングが非常に難しいのですが、
チェリビダッケはそれをやります。
それだけでなく、オーケストラ全体をチューニングし、会場や楽器の音響特性にもこだわり、
最終的には精神のチューニングとさえいえるようなことをも実現させています。
第6曲目-テュイルリーの庭 - 遊びの後の子供たちの口げんか Tuileries - Dispute d'enfants apres jeux
フルートの最初の響きが非常に美しい小曲です。
第7曲目-ビドロ Bydlo
徐々に盛り上がっていく、一種異様な高揚感、そして暴力性。
最後にそれは儚く消え去っていきます。
第8曲目-第4プロムナード [Promenade]
アレンジされたプロムナードです。
弦楽器のハーモニーが非常に美しいです。
第9曲目-卵の殻をつけた雛の踊り Ballet des poussins dans leurs coques
木管楽器を中心とした小曲です、この曲はリズムが面白く、
チェリビダッケはリズムにも偏執狂的なアプローチを施しています。
第10曲目-サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ Samuel Goldenberg und Schmuyle
この曲では対立する2つの要素のがあり(乱暴に例えるなら、ソナタ形式の提示部)、
その表情付けが見事です。

(第5プロムナード Promenade(ラヴェル版では削除))

第11曲目-リモージュの市場 Limoges - Le marche
前曲とのコントラストが見事で、この曲の躁的に明るい面を強調しています。
第12曲目-カタコンベ - ローマ時代の墓 Catacombae - Sepulchrum Romanum
冒頭の異常なまでの印象、驚き、そして暗さ・・・
ここから曲はどんどん悲劇的にエスカレートしていきます。
第13曲目-死せる言葉による死者への呼びかけ Cum mortuis in lingua mortua
オーボエの何もかも諦めきったかのような表情が非常に印象的です。
そして、この曲に顕著に見られる弱音部分の美しさといったら!
第14曲目-鶏の足の上に建つ小屋 - バーバ・ヤーガ La cabane sur des pattes de poule - Baba-Yaga
チェリビダッケはこの曲の本質を「焦燥」、と捉えているのではいかと思います。
第15曲目-キエフの大門 La grande porte de Kiev
全てがここに集約されます。
冒頭のあくまでメッゾフォルテでいて、掛け替えのない感動をどのように表現すれば良いのか?
プロムナードの主題が回帰的に登場します。
それは全体に統一感を持たせるためです。
そして、この目論見は偉大さを持って、実現されます。
曲の終結、
音がどんどんクレッシェンドしていき、
音楽がその密度によって耐えられなくなります。
そして最後に圧倒的なカタルシスをもたらし、
この偉大な曲、そして演奏は終わりを告げます。

②EMI以外のCD
EMI以外で、私が所有しているディスクを以下に記載します。
(計)7ディスク

1.

シューマン : 交響曲 第4番 他 (Schumann : Symphony No.4, Mussorgsky : Pictures at an Exhibition / Celibidache, Munchner Philharmoniker) [SACD シングルレイヤー]シューマン : 交響曲 第4番 他 (Schumann : Symphony No.4, Mussorgsky : Pictures at an Exhibition / Celibidache, Munchner Philharmoniker) [SACD シングルレイヤー]
(2012/12/20)
シューマン、 他

商品詳細を見る


ALTUSレーベルのCD(上記のリンクはSACD)です。
カップリングはシューマンの交響曲第4番です。
来日公演の演奏で、録音は1986年です。
このCDは音が良くお薦めです。

2.

ムソルグスキー:展覧会の絵ムソルグスキー:展覧会の絵
(1999/07/23)
シュトゥットガルト放送交響楽団

商品詳細を見る


GrammophonのCDです。
カップリングはストラヴィィンスキーの「妖精の口づけ」です。
オーケストラはシュトゥットガルト放送交響楽団で、透明感あふれるものですが、
録音が良くない。変なバランスになっています。

3.
Celibidache with London Symphony Orchestra

Concert ClubのCDです。
ロンドン交響楽団との演奏です。
これが非常に素晴らしい、音質も生々しく、
チェリビダッケの「展覧会の絵」の3本指に数えられるでしょう。

4.
AUDIOR.jpg
これ以降のCDはBoot盤になります。

AUDIORというレーベルのCDです。
1986年ベルリンでのライブ録音です。

断定します、チェリビダッケが演奏した「展覧会の絵」の録音の中で、
これは最も優れたCDです。
演奏・録音が非常に優れています。
チェリビダッケの残した全ての音源の中でも5本指に入るかもしれません。

各組曲の色分けも非常に丁寧になされています。
そして、全体のパースペクティブが圧倒的に深く考察されています。

最後の最後、キエフの大門で、
チェリビダッケが、「ディーーーー」と、叫びます。
その後の地平線の彼方まで見通せたかのような響き、
(ここで私は音楽を見たような、幻視したかのような感覚に襲われました。)

フォルテッシモでもオーケストラの楽器が全く濁らない。
もう、これは一つの次元を超えた演奏です。
私はこの音楽をより多くの方に聴いて頂きたいと願っています。

カップリングはブルックナーの交響曲第7番です。
こちらも名演ですが、また次の機会に・・・


5.
Mussorgsky Pictures at an Exhibition

METEORというレーベルのCDです。
オーケストラはシュトゥットガルト放送交響楽団です。

はっきりいって、同じオーケストラのGrammophonのCDより、ずっと優れています。
特に音質の点で・・・
このころのチェリビダッケはまだ晩年の悠々さは見られませんが、
オーケストラを磨けあげ、異常なまでに美しい響きを奏でていました。

6.
Artists1.jpg

ARTISTSというレーベルのCDです。
3と同じソースを用いています。
ただ、こちらの方が高音域で少し音がキンキンする気がします。
カップリングは、同じくムソルグスキーの「禿山の一夜」です。

7.
Mussorgsky Pictures at an Exhibition (Artists Chicago)

また、ARTISTSというレーベルのCDです。
こちらは、アメリカのシカゴでのライブ録音です。
私は、ARTISTSというレーベルの音作りに、あまり共感出来ません。
演奏の方も、長旅の疲れが指揮者にもオーケストラにもあったのか、
些か弛緩しています。

③映像(DVD)
なお、映像も残っています。
ロンドン交響楽団を引き連れての来日Liveなど、

テレビで放送されていましたので、
ご覧になられた方も結構いらっしゃるのではないかと思います。

1.ロンドン交響楽団との来日公演(1980年)

NHKクラシカル セルジウ・チェリビダッケ ロンドン交響楽団 1980年日本公演 [DVD]NHKクラシカル セルジウ・チェリビダッケ ロンドン交響楽団 1980年日本公演 [DVD]
(2007/10/26)
セルジウ・チェリビダッケ.ロンドン交響楽団

商品詳細を見る


2.Audi Concert
チェリビダッケ&ミュンヘン・フィルが自動車メーカー、アウディで行ったコンサート。(年代不明)
演奏は良いんですが、残念ながらいかんせん音がいただけません。
画質もあまり良くありません。

3.Live
チェリビダッケ&ミュンヘン・フィル(詳細不明)
まず、間違いなくミュンヘンフィルです。
演奏・音質共に、可もなく不可もなくといったところです。


-結論-
チェリビダッケの「展覧会の絵」はオーケストラ芸術の一つの極点、
といっても過言ではありません。

計13音源ありますが、
聴くのでしたら、②の4、
AUDIOR盤(AUD-7009-10)
が最もお薦めです。

いまなら、EMIのこのBoxが信じがたいほど、安くなっています。





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  1. 2013/03/25(月) 18:09:02|
  2. チェリビダッケ批評
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第1332回「好きな音はなんの音?」

こんにちは!FC2ブログトラックバックテーマ担当の藤本です。
今日のテーマは「好きな音はなんの音?」です。

楽器の種類は様々で
歌声も音の一つだと思います

皆さんは音楽を聴いていて、「この音をよく聴いてしまう。」
「この楽器がない音楽はあまり好きじゃないな」という好きな音はありますか?

私はピアノの音が世の中に溢れる音の中で一番好きだと最近気づきましたw
自分がいい!

第1332回「好きな音はなんの音?」



こんな トラックバックテーマがありましたので、考えてみました。

私が一番好きな音は、
1980年代後半から1996年までの、
チェリビダッケ指揮、ミュンヘン・フィルの音です。


考えるまでもありませんでしたね。

もしくは、全く音が鳴っていない状態、無音状態が好ましい音です。



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  1. 2011/12/08(木) 12:15:38|
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チェリビダッケ(Celibidache)の激安BOX

この度発売されたチェリビダッケのEMI録音集を簡単に解説させて頂きます。

チェリビダッケのドイツ交響曲集
SymphoniesSymphonies
(2011/10/24)
Sergei Celibidache

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代表的なドイツ・オーストリアの交響曲集です。


著名なドイツ、オーストリアの作曲家の交響曲の演奏集です。

チェリビダッケの演奏が他の演奏と決定的に異なる点は、
オーケストラの音色の透明性にあります。
100人からなるオーケストラをまるで一つの楽器のように演奏するのです。

このようなことが出来たのは、後にも先にもチェリビダッケ&ミュンヘン・フィルのみでしょう。

ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」を聴いてみて下さい。
このベートーヴェンとしては比較的牧歌的な曲を、
信じがたいくらいの美しさで歌い上げています。
この美しさは筆舌しがたいものがあります。



チェリビダッケのブルックナー
Bruckner: Symphonies 3-9, Te Deum, Mass in F MinorBruckner: Symphonies 3-9, Te Deum, Mass in F Minor
(2011/10/24)
Sergei Celibidache

商品詳細を見る
ブルックナーの交響曲選集です。


個人の嗜好によるでしょうが、
私にとってはこのチェリビダッケ&ミュンヘン・フィルのブルックナーがベスト演奏です。

Boot音源の方が良い演奏&録音があるにせよ、買いです。
例えば、交響曲第9番、これはもはやなんと言って良いのか・・・
人間の精神の限界を垣間見る思いです。

交響曲第3番から第9番+ミサ曲第3番&テ・デウム。
それぞれ、見事な演奏です。
オーケストラの色彩の美しさは筆舌にしがたいものがあります。



チェリビダッケのフランス・ロシア音楽
French and Russian MusicFrench and Russian Music
(2011/10/24)
Sergei Celibidache

商品詳細を見る
フランスとロシアの交響曲、管弦楽曲です。


とにかくこの選集のハイライトはチャイコフスキーでしょう。
この選集には交響曲第5番と交響曲第6番「悲愴」が収録されています。(+4番)

5番はあり得ないほど調和した音が神々しく響きます。
全楽章の奇跡的なまでの統一感!
チャイコフスキー自身はこの曲について、最終楽章が「嘘っぽい」と自身で語っています。
ここまで説得力のある演奏を提示されたら、
「嘘っぽい」ではなく、「限りなく正しい」と言わざるを得ません。

悲愴は、非常にゆっくりと演奏が奏でられます。
あらゆる音に意味を持たせることに成功しています。
私はこの演奏の第一楽章を聴いたとき、頭の中で雷が弾けた気がしました。
その記憶は一生忘れないでしょう。

ムソルグスキー/ラヴェルの「展覧会の絵」も素晴らしいし、
バルトークの「管弦楽のための協奏曲」も、異常に邪悪な演奏で感嘆させられます。
ドビュッシーの「海」と「イベリア」は明晰の極みです。
しかし、最近のブーレーズ指揮の音楽のような明晰さとは決定的に異なっています。
圧倒的に有機的でいながら、明晰で情報量が多いのです。


上記の3つのBOXは当時33枚組として売られていました。
当時3万円ちょっとで買いました。

しかし、この価格は本当に信じがたい!
圧倒的にお薦めです。
でも私はでもレコード会社の戦略にのせられたようで悔しい・・・


チェリビダッケの宗教音楽・オペラ序曲集&管弦楽曲集
Sacred Music & OperaSacred Music & Opera
(2011/10/17)
Sergei Celibidache

商品詳細を見る
宗教音楽集とオペラ序曲集、管弦楽曲です。


1曲のミサ曲、5曲のレクイエム。
そしてオペラ序曲集と管弦楽曲集。

忘れられない経験があります。
それは、私が初めてチェリビダッケ指揮のフィーレの「レクイエム」を聴いたときです。
それまで私はミシェル・コルボ指揮ローザンヌ声楽・器楽アンサンブルの演奏を好んで、頻繁に聴いていました。
おそらく理由は、それを聴くととても癒された気持ちになったからだと思います。

チェリビダッケはそれとは全く違いました。
癒しというより、その正反対の厳しさ・峻厳さを追求した音楽です。
私は愕然としました。
この曲がこの様に演奏されるなどとは、露ほども思っていなかったためです。
そして、自分の「癒し」に依存していた甘さに嫌悪感を抱きました。
この演奏に、感動はありません。
ただ、芸術の深遠さ、厳しさ、儚さがあるのみです。
それゆえに、他の演奏の追随を許さず、圧倒的な感銘があるのです。

しかし、この価格は本当に信じがたい!
私は、このBoxは、当時1万4,000円位で買いました。
圧倒的にお薦めです。


出来ればこのブログを通して買って頂ければ大変嬉しいです。(アフィリエイトがね・・・ぼそぼそ・・・)




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  1. 2011/12/08(木) 06:35:53|
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チェリビダッケ批評 21 チャイコフスキー 交響曲第4番 へ短調


Tchaikovsky: Symphony 4 & Nutcracker SuiteTchaikovsky: Symphony 4 & Nutcracker Suite
(2004/10/04)
Tchaikovsky、Sergiu Celibidache 他

商品詳細を見る

EMIから販売されている、チェリビダッケの演奏をレヴューします。
これは21回目のレビューになります。

21回目の曲目は、

"チャイコフスキー 交響曲第4番 へ短調 作品36"(1992年録音)
原題: Tchaikovsky Symphony No.4 in f-moll

チャイコフスキーは6曲の交響曲を残しています。
(マンフレッド交響曲を含めると全7曲)
交響曲第4番という作品はは交響曲第3番と比較して飛躍的な進歩を遂げています。
(一体なにが転機だったのでしょう?)
交響曲第1番、第2番、第3番までの作品も非常にクオリティの高い、
立派な作品なのですが、
他の誰にも書くことが出来ないという意味で、
交響曲第4番、第5番、第6番「悲愴」はクラシック音楽の歴史の中でも、
非常に特別な作品となっています。


交響曲第4番を後の2つの交響曲と比較します。

交響曲第5番は全体的に非常に一体感をもつ作品です。
(動機労作の素晴らしさがそれを与えています)
素晴らしい傑作なのですが、
作品が作曲家の信念の吐露として考えた場合、
この作品はチャイコフスキーの本心から少し離れた作品のようにも感じます。

交響曲第6番「悲愴」は他に比類する作品が無いほど独創的な傑作です。
しかし、余りにもユニークな曲想ゆえに、
ひょっとすると交響曲というプラットから少し逸脱している感も否めません。

とはいえ、第5番、第6番の抱えている問題点?は作品の素晴らしさを決して損なうものではありません。

交響曲第4番という作品の素晴らしさは、
後の2つの交響曲での弱点(?)とされる部分が全く存在しないという点にあるのかもしれません。

第5番は作曲家の信念の吐露という点で、
第6番「悲愴」は全体の形式として交響曲全体を把握した場合、
それぞれ欠点が存在します。
(ただし、かけがえのないほど偉大な作品であることは事実です。)


以前も記述しましたが、繰り返させて頂きます。
この交響曲第4番という作品は、
チャイコフスキーの交響曲としてだけではなく、
ロマン派の交響曲としても、最高のものの一つです。
(あとは、ベートーヴェン、ブルックナー、ドヴォルザーク、マーラーが比類する位です。)


交響曲第4番は非常に悲劇的な作品です。
どこにも開放が無いという、閉塞感。
どうしようもなく抗えない絶対的な絶望の存在。
それを交響曲という厳密な形式に無理なく、いや必然性さえ持って創り上げられています。
そこにはチャイコフスキー自身の美意識に対する徹底的な態度さえ見て取れます。


全体の形式としては、「急 - 緩 - 諧謔(スケルツォ) - 急」という交響曲としては非常にオーソドックスな4楽章形式で創り上げられています。


―演奏について―

第1楽章 Andante sostenuto  Moderato con anima
ヘ短調、序奏付きのソナタ形式


沈黙と咆哮。
相矛盾される二つの動機が葛藤する。
結部は長調で奏されるが、皮肉の表情を隠せない。


第2楽章 Andantino in modo di canzona
変ロ短調、三部形式


オーボエの歌う旋律。
この悲しさ、儚さはなんなんでしょうか?
それがホルンに引き継がれ、朗々と音楽を奏でる。
交響曲第4番の楽章の中で、
最も希望を感じさせてくれる音楽です。


第3楽章 Scherzo: Pizzicato ostinato
ヘ長調 (アレグロ):スケルツォ(三部形式)


弦楽器のピチカート!
これは本当に何十人で演奏されたものなのか?
全てが溶け合い、オーケストラが一つの楽器であることに気付かされる。
そう、本当はこうあるべきものなんだと感じます。


第4楽章 Finale: Allegro con fuoco
ヘ長調 フィナーレ。自由なロンド形式。


第1楽章の冒頭のファンファーレが、
あまりにも痛ましく再帰される。

しかし、痛々しさ、悲しみだけではなく、
人間の尊厳、意志を標榜した音楽であるように聴こえます。




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  1. 2011/03/28(月) 04:41:42|
  2. チェリビダッケ批評
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チェリビダッケ批評 20 チャイコフスキー バレエ組曲「くるみ割り人形」


Tchaikovsky: Symphony 4 & Nutcracker SuiteTchaikovsky: Symphony 4 & Nutcracker Suite
(2004/10/04)
Tchaikovsky、Sergiu Celibidache 他

商品詳細を見る

EMIから販売されている、チェリビダッケの演奏をレヴューします。
これは第20回目のレビューになります。

第20回目の曲目は、


"チャイコフスキー バレエ組曲「くるみ割り人形」 作品71a"(1991年録音)
原題: Tchaikovsky : The Nutcracker Suite

非常に儚く、なごやかで、
かつ、かけがえようもない美しさを持った演奏です。


この組曲は、チャイコフスキーがバレエ音楽から編んだ組曲である。
「くるみ割り人形」作曲中のチャイコフスキーはこの頃、
自作を指揮する演奏会を企画していたが、あいにく手元に新作がなく、
また作曲する暇もなかったため、
急遽作曲中の「くるみ割り人形」から8曲を抜き出して演奏会用組曲としました。
バレエの初演に先立ち、1892年3月19日初演されました。
組曲版の演奏時間は通常だと約23分。
(チェリビダッケは約30分かけて演奏しています。)
作曲家自身の楽曲構成ということもあり、
「白鳥の湖」「眠れる森の美女」の組曲と異なって、
この構成は大抵の演奏において不変です。以下は慣例名によります。

―演奏について―


・第1曲 小序曲 (Ouverture miniature)
Allegro giusto、変ロ長調、4分の2拍子(複合2部形式)


弦楽器が非常に快活で、わくわくさせてくれます。
ディナーミクの振動の大きさは驚異的です。
テンポも適切に(曲想に応じて)変化します。
そして、特筆すべきは弦楽器(特にヴァイオリン)の響きの美しさです。
澄み切った響きとはこのようなことを指すのでしょう。

(以下第2曲~第7曲は、性格舞曲 (Danses caracteristiques)とされます。)

・第2曲 行進曲 (Marche)
Tempo di marcia viva、ト長調、4分の4拍子(ロンド形式)。A-B-A-C-A-B-A


とても有名な曲です。
ダイナミズムが素晴らしです。
最初に登場するAの主題と
再帰して奏でられるAの主題を聴き比べてみてください。
なんという違い!
そしてその違いには音楽の必然性が込められているのです。

・第3曲 金平糖の精の踊り (Danse de la Fee Dragee)
Andante non troppo、ホ短調、4分の2拍子(複合三部形式)


チェレスタの響きが非常に美しいです。
美しいだけではありません。
チェレスタはとても音量の小さい楽器ですから、
他のオーケストラのセクションに埋もれることが多いのですが、
チェリビダッケの見事なオーケストラコントロールにより、
非常に調和して響きます。


・第4曲 ロシアの踊り(トレパック) (Danse russe (Trepak))
Tempo di Trepak, Molto vivace、ト長調、4分の2拍子(複合三部形式)。


これも非常に有名な曲です。
とても快活で溌剌としており、
これが老人の音楽だとはとても信じられません。


・第5曲 アラビアの踊り (Danse arabe)
Allegretto、ト短調、8分の3拍子(変奏曲形式)。


前曲から一変して、
暗く、不可思議な印象をもたらします。
異国情緒とでもいうのでしょうか?
この怪しさは恐ろしいほどです。
各曲におけるチェリビダッケの表情の付け方は、
驚異的なまでに適切で自然です。

・第6曲 中国の踊り (Danse chinoise)
Allegro Moderato、変ロ長調、4分の4拍子(小三部形式)。


とても短い曲ですが、
各パートをこれほどまでにポリフォニックに響かせる手腕には驚きの念を禁じえません。


・第7曲 葦笛の踊り (Danse des mirlitons)
Moderato Assai、ニ長調、4分の2拍子(小ロンド形式)


調和、この曲を聴いたときに浮かぶ印象はそれです。
ピアニッシモの美しさには言葉が出ません。


・第8曲 花のワルツ (Valse des fleurs)
Tempo di Valse、ニ長調、4分の3拍子(複合三部形式)。


クラシック音楽の中でも非常にポピュラーな音楽です。

すこし、話が逸れるのですが、
クラシック音楽の愛好家の中では超有名曲を軽んじている風潮があるように感じられます。
しかし、これ断固として間違えています。

例えば、
アルビノーニ『アダージョ』や
パッヘルベル『カノン』、
バッハ『主よ、人の望みの喜びよ』、
シューベルト『ロザムンデ 間奏曲』
といった音楽を聴いてなにも感じることが出来ないのであれば、
他の音楽を聴いても、分かるはずがない。
と私は思っています(非常に極論ですが・・・)。



さて、演奏についてですが、
いつものチェリビダッケの音楽です。


・全ての音に意味を持たせている(各楽器のパートバランスが非常に見事です。)。
・音楽のダイナミズムを非常に自然に描いている。
・完璧にチューニングされたオーケストラの響きの美しさを堪能できる。
・転調において、世界が変わったかのような印象を受ける。
 等など・・・


曲は最後、自然(この自然さは特筆するべきものがあります。)に高揚して終わりを迎えます。
この曲は組曲ですが、
不思議と交響曲(起承転結を持っている。)を聴いたような、
そういう印象を残します。

これは、
あまた存在する「くるみ割り人形」組曲の演奏の中でも特別なものだと思います。
非常に鮮烈で、覚醒的な音楽です。



こちらのブログで多種多様な演奏を紹介されています。
【失敗しないクラシックCD入門】チャイコフスキー「くるみ割り人形」




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  1. 2011/03/27(日) 21:58:54|
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