生きること、死ぬこと、それ以上のなにか・・・

このブログでは、音楽、なかでもクラシック作曲家である「バッハ」を中心に取り上げます。 また演奏家、CDについての批評も行います。 ちなみに私は指揮者のセルジュ・チェリビダッケに深く傾倒しております。

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チェリビダッケ批評 16 ベートーヴェン 交響曲第6番 『田園』 ヘ長調


ベートーヴェン:交響曲第6番ベートーヴェン:交響曲第6番
(1999/07/07)
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

商品詳細を見る



EMIから販売されている、チェリビダッケの演奏をレヴューします。
これは第16回目のレビューになります。

第16回目の曲目は、


"ベートーヴェン 交響曲第6番 『田園』 ヘ長調"(1993年録音)
原題: Beethoven Symphony No.6 "Pastorale" in F-Dur

ベートーヴェンの交響曲作品中、最も美しい交響曲です。

―演奏について―


第1楽章「田舎に到着したときの晴れやかな気分」
Allegro ma non troppo ヘ長調 2/4拍子 ソナタ形式(提示部反復指定あり)


音楽が開始され、確かに音が鳴り響いているのですが、
異常なまでの静寂さを感じさせます。

完璧にチューニングされた弦楽器群のセクションが音楽を奏でます。
そこに乗り掛かる木管楽器の美しさ(官能的でさえあります)に聞き惚れてしまいます。
この曲がこれほどまでにポリフォニックかつ有機的に書かれていることに、驚かされます。

そして、第一主題から第二主題、そして提示部のクライマックスまでの一連の流れは、
あまりにも自然体で、こうでなければならないという確信に満ちています。

これはチェリビダッケ&ミュンヘン・フィルの演奏でも、
最も最上位に数えられるものではないでしょうか。
この幸福感は他で得られるものではありません。

この交響曲は自然を賛歌したものです。
チェリビダッケ&ミュンヘン・フィルの自然を賛歌しようとする自然な気持ち。

しかし、ここで流れている音楽は、
20世紀の美学に基づく非常に人工的なものです。
人工的だから駄目。
と言っているのではありません。

人工的な理念を突き詰めていった結果、
(作曲家、指揮者、オーケストラ全て人工的なものです。)
ふと、音楽は自然に流れるのです。


第2楽章「小川のほとりの情景」
Andante molto mosso 変ロ長調 12/8拍子 ソナタ形式


とても柔らかな触り心地がする音楽です。
(それは弦楽器の完璧なチューニングに起因しています。)

第2楽章の再現部後半を聴いていて、
私は唐突に、シューベルトの交響曲第9番『グレイト』第2楽章のコーダ、
あの秋の風をうけ、
木の葉が舞い落ちるような憂愁な音楽の情景が重なりました。


第3楽章「農民達の楽しい集い」
Allegro ヘ長調 3/4拍子(トリオ部は2/4拍子) 複合三部形式(スケルツォ)。


うきうきした気分が心地良いです。
そして、次になにか来ることを予感させます。
すでに第3楽章の内に第4楽章の嵐の音楽が存在しているのです。


第4楽章「雷雨、嵐」
Allegro ヘ短調 4/4拍子


透明な嵐が吹き抜けます。
決して暴力的な響きにはなりません。
この嵐は猛威こそ振るいますが、
やがて調和の内に解決されます。


第5楽章「牧人の歌-嵐の後の喜ばしく感謝に満ちた気分」
Allegretto ヘ長調 6/8拍子 ロンドソナタ形式。


この楽章では非常に簡潔に創り上げられています。
同じ主題が何度も何度も繰り返されます。
(第一楽章の主題群に起因した主題です。)

これはまるで、シューベルトの交響曲第9番『グレイト』第1楽章みたい!
単調な繰り返しですが、作曲家、演奏家が必死で旋律を歌い続けようとします。
繰り返すことでしか表現できない領域が芸術の世界にはあります。
この楽章やシューベルト、ブルックナー等がそのような音楽を書きました。


チェリビダッケはこの最終楽章のコーダで、消え入るように、あえて力を抜きます。


最後も本当に、この田園交響曲を語り終えるのが名残惜しいという、
優しく、本当に優しく最後の2つの和音を奏でる。
決して、強調したりしない。
この交響曲への思い入れが伝わる静かな終わり方です。


この演奏で聴くと、交響曲第5番と交響曲第6番が目指す方向性は違うにせよ、
兄弟作であるということに合点がつきます。
『田園』は確かに標題音楽的でもありますが、
動機労作という一点について、交響曲第5番とそっくりなのです。
目立ちませんが、『田園』においても、動機は執拗に使いまわされています。
しかし、そのことを頭ではなく、
実感として理解させてくれる演奏は、非常に稀有です。
(ほとんどの演奏は田園のほのぼのとした雰囲気に浸っているだけのものです。)



ここで、音楽と時間という切り離せない関係にあるものが、融和していく。

チェリビダッケは生前、このように述べていました。
「音楽には始まりも終わりも存在しない。」



私はEMIから出ているチェリビダッケの一連の録音の音質に対し、
やや懐疑的なのですが、ベートーヴェンの田園に対しては素晴らしい音質が確保されています。







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  1. 2011/03/19(土) 06:49:39|
  2. チェリビダッケ批評
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チェリビダッケ批評 05 シューマン交響曲第3番「ライン」

シューマン:交響曲第3番「ライン」&第4番シューマン:交響曲第3番「ライン」&第4番
(1997/11/27)
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

商品詳細を見る

EMIから販売されている、チェリビダッケの演奏をレヴューします。
これは第5回目のレビューになります。

第5回目の曲目は、
”シューマン交響曲第3番「ライン」 変ホ長調” (1993年録音)

この曲は、5楽章形式をとっています。通常の交響曲は4楽章です。
また、「ラインという標題」にはあまり、意味が込められていないようです。
(ましてや、標題音楽ではありません。)

いや~、しかしハイドン、モーツァルトを聴いた後にシューマンの音楽を聴くと、
改めて、全然異なるものだなと、痛感させられました。


シューマンの交響曲(好きな順位)
No.1 「交響曲第2番」(暗から明に、その過程が素晴らしい。典型的なロマン派の交響曲です。)
No.2 「交響曲第4番」(2番をより、成熟させた感じ。素晴らしいが。狂気が欠けているきがする。)
No.3 「交響曲第3番」(シューマンの曲の中でも、ひときわ明るい。しかし、完成度は?)
No.4 「交響曲第1番」(まぁまぁ良い)

私はシューマンの交響曲では、交響曲第2番が最高傑作だと思っています。
(ちなみに指揮者のレナード・バーンスタインもこの曲大好きだったようで、
この交響曲を頻繁にコンサートで取り上げていました。)

シューマンはあまり、オーケストレーションが上手な作曲家ではないので、
ある意味、それをどのようにチェリビダッケが演奏するのか、興味が尽きません。
(作曲家のマーラーは
「シューマンのオーケストレーションは聴くに堪えない」
と述べ、自身で編曲を行っています!)


第1楽章 
生き生きと(Lebhaft)
変ホ長調。3/4拍子。


活気があり、また色彩感覚が非常に強い。
(ちなみに、N響アワーのテーマ音楽です。)
第1楽章冒頭から登場する明るく、精一杯な、
第1主題はこの曲全体がどのようなものであるのか、
暗に示しているようにも感じられる。

第2楽章
スケルツォ きわめて中庸に(Sehr mäßig)
ハ長調。3/4拍子。


フォルテッシモ(トッティ)で全ての楽器の音が聴こえる、という離れ業も披露しています。
(透明感が凄まじい!)
陶酔的な美しさです。

決して標題音楽ではありませんが、
なんとなく田舎(ライン地方)はこういう感じなのかなと、夢想してしまいます。

第3楽章 
速くなく(Nicht schnell)
変イ長調。4/4拍子。


この楽章はこの交響曲の間奏曲のような位置付けになっています。
木管楽器のセクションが限りなく美しい。
半音で上にのぼっていくようなモティーフが繰り返し現れます。
(こういうさりげない箇所がチェリビダッケの凄いところで、
 他の演奏を聴いても気付かなかったことを、
 はっきりと示してくれます。音楽的な必然性において。)

第4楽章 
荘厳に(Feierlich)
変ホ長調だが、実際の響きは変ホ短調。4/4拍子。


ホルンやトロンボーンが活躍し、大変荘厳な印象を残します。
(ボンクラ指揮者がこの楽章を演奏すると、金管楽器がむやみやたらに強調されるのですが、
チェリビダッケでは、非常に適切なバランス(ほぼ、完璧)で演奏されています。)
ただ、やはりシューマンのオーケストレーションに、やや難があり、
冒頭のホルンとトロンボーンによるコラールはかなり苦しそうです。

第5楽章 
フィナーレ 生き生きと(Lebhaft)
変ホ長調。2/2拍子。


前楽章から一変して、祝祭的な雰囲気を醸し出す。
全体的に、明るい開放的な気分を持っている。
金管楽器が適切に使用され、効果を最大限に発揮している。
(再三繰り返しますが、これはチェリビダッケの力によるところも大きい。
雑な演奏だと、トッティで汚い音響をまき散らすことが多い。)

ロマン派的なユートピア願望を精一杯謳い上げ、この曲は終わります。

<全体を通じての感想>
やはり、チェリビダッケはロマン派の音楽を演奏すると時が、一番輝いていますね。
それは、チェリビダッケという人物が、二元論の思想を根底に持ち、
かつ強烈なユートピア願望を懐いていたためでしょう。
(もとろん、他の要素もあると思いますが。)
この曲はシューマンが「古典派」を過去のものとし「ロマン派」を確立するという思いが伝わってくるようです。
シューマンの特徴の一つでもある、内に秘めた狂気は、あまり感じられない曲です。
演奏も、曲想に合わせて、適切な表現を行っています。


次回は、シューマン 交響曲第4番の演奏を取り上げます。





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  1. 2010/12/11(土) 07:16:29|
  2. チェリビダッケ批評
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